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アメリカ向け輸出企業の海外PL保険

  • 8 時間前
  • 読了時間: 7分

法人向け海外PL保険に精通している海外PL保険ナビのコンサルタントが「アメリカ向け輸出企業の海外PL保険」を解説します。


海外PL保険の基礎知識


アメリカ向け輸出企業の注意点


アメリカは「訴訟大国」と呼ばれており、世界の中でも特に訴訟環境が厳しい国として知られています。


企業活動においても、PL事故やリコール問題が発生した場合には訴訟に発展するケースが多く、アメリカ向けに輸出している日本企業にとって大きなリスクとなります。


法律や裁判制度も日本とは大きく異なり、被害者に支払われる損害賠償金以上の争訟費用(弁護士費用や防御費用)が発生することもあります。


アメリカ向け輸出企業は、巨額の費用負担や長期間におよぶ訴訟対応を想定して、リスク管理戦略を立てる必要があります。


懲罰的損害賠償とは


アメリカのPL訴訟において特に注意すべき制度の一つが、懲罰的損害賠償(Punitive Damages)です。


1.懲罰的損害賠償(Punitive Damages)とは

懲罰的損害賠償とは、単に被害者の損害を補てんするための賠償ではなく、悪質な行為を行った加害者に対して罰則的な意味を含めて課される賠償金のことを指します。


アメリカの一部の州ではこの制度が導入されており、企業の不適切な行為に対する社会的な見せしめとして、非常に高額な賠償金が命じられる場合があります。


例えば、企業が製品の欠陥や危険性を認識していたにもかかわらず、消費者に対して適切な警告を行わなかった場合や、リコールなどの安全措置を講じなかった場合には、原告側が企業の悪質性を主張し、懲罰的損害賠償が認められる可能性があります。


アメリカでは陪審員制度が採用されているため、裁判の判断が法律的な観点だけでなく、陪審員の感情や印象に左右されることもあります。その結果、企業側の意図とは異なる形で悪質性が認定されるリスクも存在します。


2.代表的判例:マクドナルド・コーヒー事件

懲罰的損害賠償が適用された有名な事例として、1990年代に提訴された通称「マクドナルド・コーヒー事件」があります。


この事件では、ドライブスルーで購入したコーヒーを膝の上にこぼした女性が重度の火傷を負い、マクドナルド社を提訴しました。


一見すると消費者の不注意による事故のようにも見えますが、裁判ではマクドナルド社がコーヒーを非常に高温で提供しており、その危険性を十分に認識していたにもかかわらず、適切な警告や対策を講じていなかった点が問題視された結果、マクドナルド社は約270万ドルの懲罰的損害賠償を命じられました。(最終的には和解により減額)


この事件は、企業の安全管理やリスク対応の重要性を象徴する代表的なPL訴訟として広く知られています。


2.海外PL保険の注意点

アメリカ向け輸出企業にとって、海外PL保険の加入は非常に重要です。


しかし、日本の損害保険会社が提供している多くの海外PL保険では、懲罰的損害賠償が免責事項(保険対象外)になっています。


そのため、懲罰的損害賠償にも対応可能な保険内容であるかを確認した上で、適切な海外PL保険に加入することが重要になります。


争訟費用(内枠払方式・外枠払方式)


アメリカのPL訴訟では、弁護士費用や証拠収集費用、防御費用などの争訟費用が非常に高額になることがあり、訴訟コストの半分以上が争訟費用で占められるとも言われています。


また、企業に過失がない場合でも、いわゆる「言いがかり訴訟」に巻き込まれる可能性があり、その場合でも企業は防御のために訴訟対応を行わなければなりません。


そのため、海外PL保険を検討する際には、争訟費用が「内枠払方式」か「外枠払方式」かを十分に確認する必要があります。


1.争訟費用「内枠払方式」とは

内枠払方式とは、損害賠償金と争訟費用を合算して、支払限度額の範囲内で保険金が支払われる方式です。


例えば、支払限度額100万ドルの保険契約において、PL事故が発生して損害賠償金60万ドル・争訟費用60万ドルかかったと仮定すると、合計で120万ドルの損失が発生しています。


この場合、保険で支払われるのは支払限度額100万ドルまでとなり、残りの20万ドルは企業の自己負担となります。


この方式では、争訟費用が増加すると支払限度額を大きく消費してしまい、本来の目的である損害賠償金の補償が十分に機能しなくなる可能性があります。


2.争訟費用「外枠払方式」とは

外枠払方式とは、損害賠償金と争訟費用を別枠で、保険金が支払われる方式です。つまり、争訟費用は保険の支払限度額とは別に支払われます。


同じ例で、支払限度額100万ドルの保険契約において、PL事故が発生して損害賠償金60万ドル・争訟費用60万ドルかかったと仮定すると、合計で120万ドルの損失が発生しています。


この場合、損害賠償金60万ドルは支払限度額の範囲内で保険金が支払われ、訴訟費用60万ドルは別枠で支払われます。そのため、企業の自己負担は発生しません。


外枠払方式は、損害賠償金の支払いに影響を与えることなく争訟対応を行うことができるため、アメリカ向け輸出企業にとっては非常に重要な条件といえます。


ただし、保険会社や商品内容によっては外枠方式を選択できない場合もあるため、契約内容を事前に確認する必要があります。


保険の発動条件(トリガー)


海外PL保険には、保険金が支払われる条件(トリガー)として主に次の2種類があります。

■損害賠償請求ベース(Claims Made方式)

■事故発生ベース(Occurrence方式)



1.損害賠償請求ベース(クレームズメイド方式/Claims Made Basis)

損害賠償請求ベースとは、損害賠償請求が行われた時点で契約している保険が適用される方式です。


初年度契約の保険開始日を遡及日として設定して、それ以前に発生した事故は補償対象外となります。


この方式は保険契約を継続していない場合、補償が継続されないというリスクがあります。保険更新時に補償内容が縮小された場合には、過去の事故であっても新しい条件が適用されてしまう可能性があります。


保険会社を変更する場合には、新しい保険会社が前契約の遡及日を引き継ぐ必要がありますが、過去の事故発生可能性が高い場合(例えば過去の製品の瑕疵の存在が報道されていた場合)などには、遡及日が継承されないケースもあります。


企業にとっては、できれば賠償請求請求ベースより事故発生ベースを選択すべきです。


2.事故発生ベース(オカーレンス方式/Occurrence Basis)

事故発生ベースとは、事故が発生した時点で契約していた保険が適用される方式です。


保険契約が終了していても、事故発生時に契約していた保険が補償を行います。


この方式は企業にとって非常に有利ですが、保険会社にとっては長期間にわたり責任を負うことになるため、日本の損害保険会社が提供する海外PL保険では採用していない場合も多くあります。


一方で、アメリカの取引先から売買契約書などでOccurrence Base(事故発生ベース)での保険加入を求められることがあります。これは、Claims Made(損賠賠償請求ベース)の場合、取引先が将来にわたって保険契約の継続を将来にわたってチェックしなければならないためと言われています。


アメリカ向け輸出企業の海外PL保険のまとめ


海外PL保険のまとめ

・アメリカ向け輸出企業は、巨額の賠償金負担や長期間におよぶ訴訟対応を想定する必要がある。


・懲罰的損害賠償に対応可能であるかを確認。※免責事項になっていない保険会社を推奨。


・争訟費用「内枠払方式」か「外枠払方式」を選択。※外枠払方式を推奨。


・「損害賠償請求ベース」か「事故発生ベース」を選択。※事故発生ベースを推奨。


法人向け海外PL保険に精通している海外PL保険ナビのコンサルタントが「アメリカ向け輸出企業の海外PL保険」を解説しました。


※今回ご紹介した内容はあくまでも一般的と思われる内容を記載しています。

※海外PL保険は、保険会社・プランによって異なりますので、詳細は当社までお問い合わせください。

 
 
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