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海外PL保険の基礎知識


法人向け海外PL保険に精通している海外PL保険ナビのコンサルタントが「海外PL保険の基礎知識」を解説します。


海外PL保険の基礎知識


 

海外PL保険とは

 

海外PL保険(海外生産物賠償責任保険)とは、製造販売した製品の欠陥が原因で、海外で発生した対人・対物事故において、自社が負担する法律上の賠償責任をカバーする保険です。


損害賠償金のほか、争訟費用(弁護士費用等)や生産物回収費用(リコール費用)が保険金としてお支払いされます。


損害賠償請求や訴訟提起に対して、保険会社が被保険者(補償対象者)を防御する義務があることを約款で定めていることが海外PL保険の特徴です。


 

海外PL保険の必要性

 

高額な損害賠償金や弁護士費用の金銭的補償と併せて、保険会社が提供する事故対応サービスが、海外PL保険の重要なポイントになります。


1.損害賠償金・弁護士費用

訴訟大国アメリカのPL訴訟における判決額の平均は500万ドル (約5億円)、中央値で250万ドル(約2.5億円)です。


加えて、弁護士費用も成功報酬制度で一般的に賠償金の30~50%と高額になります。


契約上で免責条項を設けていても、被害者が提訴してくれば、応訴して責任が無いことを証明するほかなく、言いがかり的な訴訟にも対応しなければなりません。


国や州によって異なりますが、製品の製造販売業者だけでなく、輸出業者・商社・部品の製造販売業者もPL訴訟の被告になる可能性があります。


海外PL保険を活用することで、高額な損害賠償金・弁護士費用をリスクヘッジできます。


2.全世界にネットワーク構築

世界各国・地域において適用される法律はさまざまです。


なかでもPL訴訟が多いアメリカでは、州によっても法律が異なるため「フォーラムショッピング」という、原告側が自己の主張にとって一番都合の良い州で裁判に持ち持ち込むことがあります。


保険会社は事故内容や製品種類、訴訟提起の国や州の法律などを踏まえて、最も適切と判断しうる弁護士を選定するため、各地域・各分野に秀でた弁護士と広範囲にネットワークを構築しています。


3.事故対応の戦略パートナー

ひとたび訴訟になり、事故が公になると、同様な被害にあったと主張する人々が続々と名乗りをあげて集団で訴訟を提起する「クラスアクション」に持ち込まれることがあります。


新聞広告やインターネットを通して扇動する傾向も見られ、そのような連鎖クレームを回避するための戦略が求められます。


また、陪審制度により一般市民(陪審員)が責任の有無や損賠賠償金を決定するため、被害者への同情が先行して、原告有利に偏るケースもあります。


保険会社が防御対応を行うことによって、法廷で争うべきか、示談や和解による解決とするべきか等、メリット・デメリットを分析して、事故対応を進めていくことができます。


※国や地域によっては、保険会社による防御が不可能となる場合や保険会社が前面に立って防御対応を行わないほうが適切な場合もあります。


 

海外PL保険の選び方

 

海外PL保険の加入を検討する際、自社に適したプランを選ぶポイントをまとめます。


1.支払限度額(補償額)

支払限度額(補償額)は企業のリスクにより異なります。


米国企業からは、取引条件として200万ドル(約2億円)以上の海外PL保険に加入するように要請されるケースがあります。


2.発動要件(トリガー)

海外PL保険の発動要件(トリガー)には、2つの方式があります。


1.損害賠償請求ベースで適用される「クレームズメイド方式」

保険料は割安になりますが、遡及日(一般的には初年度保険開始日)以前の事故は保険適用外、遡及日以降の事故でも、保険契約終了後に損害賠償請求が起きた場合は保険適用外というデメリットがあります。


2.事故発生ベースで適用される「オカーレンス方式」

保険料は割高になりますが、保険契約期間中に事故が発生していれば、損害賠償請求や訴訟を提起された時期が保険契約終了後であっても保険金が支払われます。


米国企業から海外PL保険の加入を要請をされる場合は、事故発生ベースの「オカーレンス方式」を指定されることが多いです。


3.リコール特約の有無

リコールとは、自社で製造販売した製品の欠陥があった場合、回収することです。


生産物回収費用(リコール特約)をセットすれば、回収にかかる運賃や保管費用等を海外PL保険でカバーすることができます。


4.被保険者(補償対象者)

被保険者とは、海外PL保険の補償対象者です。


子会社や取引先を被保険者に含めたい場合は、見積り依頼時に保険会社に伝える必要があります。


5.争訟費用

争訟費用(弁護士費用、協力費用等)には、2つの種類あります。


1.争訟費用を支払限度額には組み込まない「費用外枠払い」

保険料は割高になりますが、争訟費用を気にせずに事故対応できるメリットがあります。


2.争訟費用が支払限度額に組み込まれている「費用内枠払い」

保険料は割安になりますが、特に訴訟にかかる費用が高額な米国での訴訟を念頭においた場合、争訟費用だけで支払限度額を使い切ってしまうリスクがあります。


6.保険適用地域

保険適用地域は、①日本を除く全世界、②日本、北米を除く全世界、③日本、北米、欧州、豪州を除く全世界等があります。


国内向けのPL保険は、国内向けに補償や特約がカスタマイズされていますので、海外PL保険とは別に加入しましょう。


 

保険料算出の仕組み

 

保険会社が海外PL保険の保険料を算出する際、基準となる要素は大きく分けて3つあります。


1.製品に関する情報

■輸出製品について

化粧品や健康食品、幼児向け玩具など、リスクが高い製品は、保険料が高くなります。


■輸出国について

訴訟環境が厳しい米国を補償対象地域に含めると、保険料が高くなります。


■輸出売上高について

米国やヨーロッパ・オーストラリアなど、リスクの高い地域への輸出割合が多いほど、保険料が高くなります。


2.製品の管理体制

■過去の事故歴

過去に事故が発生していると、保険料が高くなります。事故内容(発生時期、 場所、原因、損害額、再発の可能性等)によっては、契約できないケースもあります。


■製造業者か販売業者か

一般的に製造業者の方が販売業者と比べて、保険料が高くなります。


■管理体制について

製品の製造は自社か外注(OEM)か、品質管理マニュアルの有無など、個別にリスクを確認します。


3.保険条件

■支払限度額

支払限度額を高く設定するほど、保険料は高くなります。

■保険金支払の要件

事故発生ベースの方が損害賠償請求ベースに比べて、保険料が高くなります。


■訴訟費用の支払い

訴訟費用が賠償金と別枠で支払われる訴訟費用外枠払いは、訴訟費用内枠払いに比べて、保険料が高くなります。


■加入団体

全国商工会連合会(商工会議所)に加入している企業は、団体割引が適用される保険会社があります。


 

取引先から加入要請

 

海外の取引先と売買契約書やライセンス契約書を締結する際に、海外PL保険の加入を要請されるケースがあります。


1.一般的な要請内容

世界的ブランドを擁する企業や大手流通業者(特に米国企業)は、以下のような加入要請を課してくることがあります。

取引先から加入要請

2.追加被保険者は要申請

取引先を被保険者として追加する場合、見積り依頼時に保険会社に伝える必要があります


追加被保険者に加えて契約していることの証明として、保険証券に明記されていることや英文付保証明書の提出を求められるケースもあります。


3.要請に応じないケース

取引先からの加入要請では、定型の文言を投げかけてくる場合が多く、単に「商品の輸出」の契約にもかかわらず、労災保険、自動車保険の加入要求してくるケースがあります。


加入要請されたからと言って全面的に従うことはなく、取引先と交渉して合理的な範囲で保険に加入することが重要です。


 

海外PL保険のまとめ

 

海外PL保険のまとめ

・海外PL保険は、製造販売した製品が原因で、海外で発生した対人・対物事故を補償する保険。


・高額な賠償金・弁護士費用の金銭的補償だけでなく、示談交渉等の事故対応サービスがある。


・「支払限度額」「発動要件」「被保険者」「保険適用地域」等、自社に適した補償を選択可能。


・保険料は主に「製品情報」「製品管理体制」「保険条件」という3つの要素によって決定。


・取引先(特に米国企業)から、取引条件として、海外PL保険の加入を要請されることがある。


法人向け海外PL保険に精通している海外PL保険ナビのコンサルタントが「海外PL保険の基礎知識」を解説しました。


※今回ご紹介した内容はあくまでも一般的と思われる内容を記載しています。

※海外PL保険は、保険会社・プランによって異なりますので、詳細は当社までお問い合わせください。

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